君島十和子さんとのSpecial Talk -PART4&5-
セブンテンの服を着てくださったことをきっかけに始まった、君島十和子さんとの交流。その後、十和子さんからのオーダーで、セブンテンがデザイン監修した企画も現在進行中!素敵なご縁が重なり、十和子さんと関わるにつれ、その丁寧で謙虚、かつ前向きな人柄に、一人の女性として、母として、いろんなことをもっとお聞きしたい! と思うように。ディレクター、川人未帆のそんな熱い思いから今回の対談が実現、飾らない言葉でざっくばらんに語られた内容をたっぷりお届けします。
「いいものを作りたい」が最優先!
とことんこだわる、妥協しない姿勢は一緒
未帆 父はいつも、みんなが喜ぶ方がいいっていう考えがベースにあって、母はとにかくあったかくて自然な心配りが上手な人。学生時代、母とケンカして学校から帰宅したら、机に「ごめんね」って書かれたカードを持ったぬいぐるみが置いてあって(笑)思わず、くすっと心が和らぐ仕掛けもすごく上手! だから、私も服を作る上で何より大事にしているのはお客様を「喜ばせたい」という思い。そこはどうしてもこだわりたい。この、絶対妥協したくないという強い思いはアパレル時代の師匠の影響が大きいかもしれません。「これくらいで喜んでくれるだろう」みたいな奢りは絶対なし、常に真摯に向き合っていきたいと思っています。FTCの商品を作るときに、十和子さんが大事にしていることやものづくりの目線について知りたいです!
十和子 化粧品は直接肌に触れるものだから、新しい商品を考えるときも、「成分に聞け」が信条。その成分が生かしやすい剤型ってなんだろう?ということから始まります。長い間この仕事をしていて、私はそれこそすっかり“成分マニア”だけど、そこを突き詰めすぎても多くの方に理解してもらえなくて。とはいっても多くの方に、その商品のよさを理解してもらうにはどうすればいいいか…、そのバランスを考えるのが一番難しい。例えばある成分を0.05%にするか、それとも0.08%にするか…、みたいに他の人からしたら、違いある? って思うくらい細かいことも自分の中でとことん突き詰めて諦めない(笑)妥協なし! の姿勢は未帆さんと一緒かも(笑)結果的に思い通りに運ばなかったとしても、次に絶対生かそうと思うタイプ。そういった積み重ねが確実に足跡として残っていくと思います。
未帆 とことんこだわるところ、似てます(笑)私も、生地ありきで服を考える時は、その生地を生かすには? をまず考えます。Aパターンは自分がすごく好きだけどちょっとマスには刺さりにくいデザイン、Bパターンの方がマスには刺さりそうなデザイン…、Bに寄せるときもあったけど、そうしたらやっぱり自分が着なくなっちゃう。だから、今はAを選択することが多くて、お客さんは少なくても、そのお客さんに濃く愛してもらえたらしあわせ、という気持ちです。自分が納得できることが大事。
十和子 ある方から昔、「作り手がお客様の財布の中を心配するのはおこがましい」と言われたことがあって。全力でものをつくってそれを提供して、買うか買わないかは、お客様が決めることだからっていう言葉が胸にすごく響いて、そこから「本当に納得できる、いいものを作りたい」が最優先、私も妥協しないようになりました。
譲れない強いこだわり=「オタク」!?
未帆 価格についての自分のこだわりもありますよね。ここまでだったら高すぎる、ここまでだったら買える、とか…。
十和子 こだわり始めたら、化粧品は消耗品だけどやっぱりお値段は上がっちゃう。でも一個だけ、清水ダイブで買っていただいても、化粧品って本当の意味をなさないからそこは本当にバランスですよね。
未帆 コスメは「継続」っていうことを考えなきゃいけないのが大前提だから、そこがお洋服と違うところですね。でも今はその悩み、ものづくりの葛藤の過程をインスタライブなんかで話せるから、お客様に分かってもらうツールがある。SNSを通じて自分の思いをダイレクトに伝えられるっていうのはしあわせだなって思います。
十和子 私は嫁いだとき、主人の家業が服飾メーカーだったんです。その当時は、SNSはなかったけれど、この服にはこのメークがいい! とデパートなどで直接お客様に提案したら、購買意欲につながっていく様子を肌で感じた経験があります。今のインスタライブに近い感覚ですね。
未帆 とことんこだわる、ともすると「オタク」と自負している私ですが、実は勝手に十和子さんもそうじゃないかな?って期待していて(笑)
十和子 そうかも(笑)主人の父が「服飾は日常の芸術だ」ってよく言っていたんですけど、身に纏える芸術、それってしあわせの原点なので、服作りって改めて素晴らしいお仕事ですよね。
美容を通して、もっと多くの女性に
「自分を大事にすること」が浸透してほしい
未帆 着てくださる方がいるからこそ成立していて、だから本当にありがたいなって。十和子さんのこれからの夢ってなんですか?
十和子 化粧品って、女性の一番近いところにあるもの。製品のよさはもちろん、スキンケアをもっと追求していきたいです。それから、さらに多くの方に、“自分を大事にすること”がもっと浸透してほしい。「自分を大事にするっていうのは自分の人生の容れ物を大事にしてあげることなんだよ」ってことを伝えたいです。家庭のエンジンであるお母さんが笑顔で、きれいでいることって周りに波及して、社会が明るくなることにも繋がると思うんです。自分が心地よかったり、気分がふわっとしてれば自ずと笑顔になる。美容院の帰りって心が軽くなりますよね、そんな気持ちを美容を通して、日常のあらゆる瞬間に持ってもらえるような仕事をしていきたいなって思います。
未帆 十和子さんの外見の美しさはもちろんですが、内面もとても素敵だからこそ、その美しさに説得力がある気がします。今日お話をして、改めて納得しました! この仕事をしていて、時代についていくことの大事さを感じるのですが、十和子さんは若い世代にも時代や考えにも、いつも謙虚で気さくで柔軟なイメージ。何か、人と接するときに気をつけていらっしゃることってありますか?
十和子 「私ってこうなの」と自分を決めつけてしまう、思考を閉じ込めてしまうことはしたくないって思っています。その面ではこだわりを持たないことがこだわりというか…(笑)もちろん、仕事の場面で譲れないこだわりはあっても、「これはしません」、「これが私流」というのはことさらには持たないようにしています。年を重ねると、悲しいけれど感性は鈍ってしまう。自分が垣根を低くして、相手の方がものを言いやすいように、とは心がけているかも。独りよがりな態度で裸の王様になってしまうことだけは避けたいなって。だから、お客様の声にも素直に耳を傾けるようにしています。
インスタも気分転換のひとつ
世界がわーっと広がっていくのを実感!
未帆 そこはすごく見習わなきゃいけないなって勉強になります。わりと私は「これが私のやり方だから、なんといわれても」っていうところが大きいから(笑)バランスですよね、こだわりも大事だけど柔軟さも持ちたいです。私もそんなふうにしなやかに年を重ねていけたらって思います。 毎日とっても忙しいと思いますが、十和子さんの気分転換法、教えてください! もう、聞きたいことがありすぎて、質問責めになっちゃってすみません(笑)
十和子 SNSを通じて違う世界の人と話せるのがすごく楽しくて、インスタも気分転換のひとつかも。仕事も住んでいるところも違う人と交流できるのは、視点を変えてみるきっかけにもなって楽しいです。例えば、インスタライブで同じことを言っても人によって180度違う反応だったり、自分が見ていた世界がわーっと広がる。さっきの話でもあったけれど、一番避けたいのは裸の王様になっちゃうこと。まだまだ知らないこと、お伝えしたいことが沢山あるし、もうあまり怖いこともないので(笑)いろんなことを試すことに恐れがないから、とりあえず私がチャレンジして、いいものはいいいし、だめなものはだめって伝えるからねっていうマインドです。
未帆 十和子さんの強さときらきらした好奇心、本当に素敵! 私は、チャレンジしたいことももちろんたくさんあるけど、この春に社員が増えて、より、この規模感を大事にしたいなって。スタッフにとっても働いている時間が何かの犠牲になってはいけない。幸せを生み出す時間になってほしい。かわいいものを作り続ける、というのもモチベーションを上げるひとつだし、働いてもらえる環境作りも使命だと感じています。それを自分がコントロールできる規模感も大切にしていきたい。そして今、こうして自分の歩幅で無理なく働けているのは信頼できる社員の皆や取引先さんはもちろん、娘のことで常に力になってくれる母のおかげ。もう、この環境には感謝しかないです。
人の手を借りるなら手放すことも必要と痛感
きっかけは「チョコレート事件」!
十和子 お母様も、頑張ってる未帆さんを間近で見ていて応援するのが楽しいんだと思いますよ。私も今思い返すと実家の玄関で母に娘を託して「じゃ!」という時期がありました。まだ仕事を始める前、長女が7歳まで無添加の食材にこだわっていて、まさに子育てに没頭の毎日だったけれど、そんなこだわりは、仕事を始めたらとても無理(笑)仕事が忙しくなると実家の玄関に娘とオムツをセットで預けて「じゃ!」。「宅急便みたいだね」と言われてました(笑)ある日、静かだなと思ってキッチンに様子を見にいったらびっくり仰天! 冷蔵庫の前で、いただきもののチョコレートをしずかーに黙々と食べている娘の後ろ姿が。そしてゆっくり振り向いた娘の口から茶色いよだれ…!(笑)「この世の中にこんなにおいしいものがあるなんて!」という感動で無心に食べていたんでしょうね、あの事件は本当に衝撃でした(笑)親に預かってもらうからには「〇〇は食べさせないで」とか細かいことをいうのは反則、その事件をきっかけにいい意味で割り切って、どんと構えられるようになったかもしれません。
未帆 まさにチョコレート事件ですね(笑)「ここはもういい」と割り切るところと「ここだけは」ってこだわるところ、その線引きがちゃんとあってバランスがとれているのがカッコいいです! 子育てって正解がないから、私も諦めるのではなくて、うまく手放せるようにしたいなって思います。
きれいな包装紙やシーズンごとに変えるタグ
原点は母から受け継いだ「人を楽しませたい」っていう気持ち
十和子 「親が世に出ているからこうなのね」と言われないよう、礼儀やお行儀、人に迷惑をかけないことなどはしっかり教えてきたつもりですが、すべてに「こうじゃなきゃ」はママも子どももしんどすぎる。だから、お互い心地いいバランスを一緒に探していけたらいいですよね。私も毎秒、最優先事項はなんなのか考えているけれど、だんだんそのリストの一番上だけをコンプリートできていればよし! って思えるようになってきました。70、80になった時、長く元気で人のお世話になることなく、私らしく人生を重ねられるように、みんなで楽しいことをするのが大好きなので、周囲を巻き込んで新しいことにもチャレンジしていきたいです。あ、そうだ、前にお聞きした未帆さんのお母様のお誕生日エピソードが大好きで、人を楽しませるのがすごく上手なお母様だなって印象に残っています。
未帆 あ、お友達へのお返しの話ですね。そうそう、子どもの頃、お誕生日会に来てくれたお友達へのお返しを母が用意してくれたんですけど、2種類あってそれぞれ素敵な包みで可愛くラッピングしてくれて。これがお友だちに大好評、お返しが可愛いから未帆ちゃんのお誕生日会行きたい!って子もいたくらい(笑)そんな母の遊び心を、私も母になって受け継ぎたくて、贈り物には小技を効かせてます(笑)
十和子 セブンテンの包装紙もものすごくきれいで、箱を開けた時の高揚感がすごい! 主人も「捨てるのはもったいないね」って言うくらい。タグも毎シーズン変えていらっしゃったり、未帆さんの、お客様への心遣いを感じます。
未帆 包装紙、気にいっていただけてうれしいです! 思い返すと、母は私の長所を伸ばすことをいつも自然としてくれていた気がします。シルバニアファミリーにはまっていた子どもの頃、母が納戸を空けてシルバニアファミリースペースを特別に作ってくれて。当時、おもちゃの食べ物がパンくらいしかなくて、「いやいや、ウサギなんだから人参も食べるでしょ」と人参を自分で作ったり、母のガーデニング用の土を空き箱に入れて畝をこしらえて畑を作って、花をおさらに盛ってみたり…、もうどっぷりその世界にハマることができました(笑)とことん追求するところはやっぱり今も昔も変わってないかも(笑)好きなことに、とことん没頭する環境を与えてもらったのはすごく感謝していて、今の仕事にも繋がっていると感じます。
娘の好きな「ごっこ遊び」
目玉のおやじにもガストンにもなる!(笑)
十和子 追求型は変わってませんね(笑)!娘さんもシルバニアファミリーで今、遊んだりしていますか?
未帆 それが全然なんです(笑)娘は「ごっこ遊び」が好きで、今ハマってるのは「ゲゲゲの鬼太郎」!私もしっかり付き合ってちゃんと打ち返すタイプなのでよく目玉のおやじになってます(笑)ちょっと前の美女と野獣ブームの時は、ガストンになりきってました!
十和子 えー!すごく楽しい親子(笑)私の娘は二人とももう成人しているけど、娘から美容情報をもらったり、私もいいものを薦めたり、双方向でいい刺激がもらえる関係です。前に、まゆゆ(元AKBの)が来ている服をどっちが先に検索できるか競争したことも(笑)もちろん娘の圧勝だけど、そんな時間も楽しいです。ララフォーレやルミネに一緒に行ったら、上の階から順番にくまなく見ていくからこちらもスニーカーで参戦したり(笑)
未帆 親子でお買い物とかいいですね、今から楽しみです♡ 今日は本当にたっくさんお話していただいてありがとうございました!
十和子 こちらこそありがとうございました! 2時間喋りっぱなし(笑)、すごく楽しい時間でした。今まさに子育てまっただなか、その中でものづくりに邁進する未帆さんの葛藤や頑張りがすごく伝わって、セブンテンに込められた熱いこだわりも知れて。セブンテンのお洋服にますます愛着が湧きました! ずっと大切に着ていきたいです。
未帆 ありがとうございます!真面目な話から面白エピソードまで盛りだくさん(笑)これからも、女性として、母として、ものづくりに携わる先輩として…、十和子さんの背中を追いかけていきたいです!
君島十和子さん プロフィール
Instagram: @ftcbeauty.official
FTCクリエイティブディレクター
高校在学中に「’85m年JAL沖縄キャンペーンガール」に選ばれ、芸能界デビュー。
1986年『JJ』のカバーガールを務め、同誌専属モデルに。その後、舞台やテレビなどを中心に女優として活躍。結婚を機に芸能界を引退。2005年、20数年に及ぶ美容体験をもとに、化粧品ブランド「FTC(フェリーチェトワココスメ)」を立ち上げ、製品開発に携わる。
二人の娘の母。
美容家としてメディア、SNS等で精力的に活動している。
取材・文/北山えいみ