君島十和子さんとのSpecial Talk -PART2-

セブンテンの服を着てくださったことをきっかけに始まった、君島十和子さんとの交流。その後、十和子さんからのオーダーで、セブンテンがデザイン監修した企画も現在進行中!素敵なご縁が重なり、十和子さんと関わるにつれ、その丁寧で謙虚、かつ前向きな人柄に、一人の女性として、母として、いろんなことをもっとお聞きしたい! と思うように。ディレクター、川人未帆のそんな熱い思いから今回の対談が実現、飾らない言葉でざっくばらんに語られた内容をたっぷりお届けします。

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家庭と仕事の両立はやっぱり難しい
「なんで私ばっかり」って思っちゃう

未帆 お仕事を始めたのは娘さんたちが小学校に入られてからですか?

十和子 子どもがまだ小さい頃は、お母さん=家庭のエンジン、ムードメーカーなところが大きいですよね。私は娘が幼稚園の頃から徐々にお仕事を始めて、本格的に仕事を始めたのは長女が小学校に入ってからだったと思います。

未帆 どうでしたか…? 仕事をしながら家事、幼稚園のこと…、お母さんの担うことって幼少期はすごく大きいじゃないですか。働いていて、自分の負担の大きさに今の女性ってすごく悩んでいると思うんです。私もそうですけど、「なんで私ばっかり」って思うこと、よくあります。当時、十和子さんはどういうお気持ちでしたか?

十和子 もうそれはずっと、せめぎ合いですよね。自分のプライドと仕事、どちらにプライオリティを持っていくか。やっぱり仕事がしたいという気持ちがあったら、「仕事してるから、できない」っていう言い訳が、子どもが小さかった時の方が効かなかった気がします。ある程度大きくなってからの方が「ごめん、できなかった…!」って素直に娘にも主人にも言いやすくなりました。娘たちが小さい頃の方が、完璧を目指して自分の首をしめていたなって思います。

未帆 十和子さんも、そんなお気持ちでいらっしゃったことがあったんですね。

十和子 その時はまだ若いので、なんとかなったんです。でも、年を重ねるとなんとかならない自分がそこにいて、じゃあ家族の次に優先しなきゃいけないことっていうとやっぱり他人を巻き込む仕事。同じ仕事をしているので、改めて言わなくても主人にわかってもらえる部分はあってそこは救いでもあり、でも逆にずっと一緒で全部見えてしまっているから、ごまかしがきかないところでもありましたね(笑)

未帆 私の場合は、「なんで私ばっかりエクスキューズが必要なの」って思ってしまうことがあります。なんで「仕事させてもらってる」って思わないといけないんだろうって。お仕事ができることにはもちろん感謝しているし、主人という大黒柱があってこそ自由にものづくりを楽しめているって頭では思うけど、男性は仕事もゴルフもエクスキューズなしに自由に行けるのに、どうして罪悪感いっぱいで1時間のお茶をしなきゃいけないんだろう…、という気持ちも。十和子さんは、どうやって気持ちを整理していましたか?

夫へのイライラには真正面から戦わない!
「ありがとう」戦法で自分がラクに

十和子 ついつい最近まで、朝一緒に出て一緒に会社で仕事して一緒に帰るのに、帰りの車の中で「夕飯どうするの?」とくるわけですよ。そこで口をついて出るのは、「作るよ!(でも材料ないしね)」(笑)でも、長年一緒にいるからそのメラメラした空気感で「じゃ、スーパー寄る?」みたいな感じに。うちの主人も働く母親の息子だから、理解はある方だとは思います。それでも最近まで、同じように仕事をしていても「夕飯どうする?」は、悪気なく出てくる(笑)これってでも男性の本能みたいなもので、真っ正面から闘ってもしょうがないなと割り切るようになりました。戦わない方法を探るしかないな、と思って逆に「ありがとう!好きな仕事ができて感謝してます」みたいに、日々の生活のどこかのタイミングで言うようにすると、この一言が結構効いてくる! 向こうがこちらに言いたいことが溜まっていてもそこで猶予期間ができる(笑)こういったことは、夫婦の日々のやりとりを通した経験の中で気づいていくんです。

未帆 十和子さんっていろんなこと柔軟に考えられていて、夫婦間でよくある“もやもや”もしなやかにかわされる術がすごい!

十和子 大事なのは、絶対的な目的は何かということ。まず、自分が気持ちよくいたい。そのためにはどうすればいい…? って、逆算していくことかなあって。結果的に素直に感謝を伝えることで円滑にいくのであればそうする!

未帆 できるかなぁ(笑)

十和子 「ありがとう」って、日常になればなるほど力を持つと思う。ちょっとしたことでも、さらっと「ありがとう」を言えると夫婦の温度感は変わってくるはず。本人に面と向かって言わなくても、例えばお嬢さんに「パパが頑張ってくれてるから、楽しいよね♡」ってわざと聞かせるのもアリかなって。といっても、そのことに気づいたのは私も相当あとですけど(笑)

“覚悟”がベースにある結婚
「愛してる」だけじゃない、「同志」の感覚

未帆 家では娘さんの父と母で、職場では社長とプロデューサーという立場。切り替えるスイッチや、十和子さん自身が何か気をつけていることってありますか?

十和子 家ではなるべく、仕事の話はしないこと。やっぱり声も顔つきも自然と変わっちゃうから、スイッチをオフにするためにも仕事の空気を持ち込まないようにしています。でも、リモートだと家に仕事の空気がどうしても入って来ちゃいがちで、大変なことも(笑)

未帆 リモートって、便利なことばかりじゃないですよね(笑)十和子さんって、「この人と絶対生きて行く!」っていう覚悟がしっかりと根底にある気がします。

十和子 結婚の時にいろんなことがあって、それこそ顔も知らない方から結婚を反対する手紙が届いたり…。そこを乗り越えて結婚したので、別に意地になるわけではないけど、お互いその頃の気持ちがベースにある。最初に「この人と生きていく」という覚悟ができて、そこがベースになっているから、「すき」とか「愛してる」だけじゃない、結婚当初から今までずっと、同士の感覚です。

未帆 ただただハッピー! だけじゃない、強い意志や絆がご夫婦の中に最初からあったんですね。結婚もそうですが、十和子さんはわりと初志貫徹タイプですか?

十和子 うーん、どうだろう…、でも、流れの速さに合わせようというところもあります。仕事の仕方とか、流れについてはそこまでこだわらないけど、でも「自分で決めたことだし」というところがある。「後悔したくない」っていうのが大前提にあります。

心ない言葉に傷つくこともある
SNSとのつきあい方

未帆 さっき、結婚当初知らない方から傷つくお手紙をもらったお話がありましよね。SNSが当たり前の今って、そういう傷つくことが周りに溢れてるって思うんです。心ないことを突然言われたり、自分の子どもの世代なんてそんなことって日常茶飯事なのかなと心配にも。私は自分の中に解決策というか処方箋があってあまり気にならないんですけど、そういったネガティブな声を十和子さんはどう意識されていますか?

十和子 基本的にSNSは無料なので、何を言うのも言われるのも自由、というのがベースにあって。攻撃したい人は認められたい、自分の存在意義を示したい人だと思うので、だからまず認めてあげる。無視だと火に油を注いでしまうから、私はどんなコメントも♡だったり、「ありがとうございます」と返すようにしています。よっぽどひどい時は、まず謝る。こちらはそんなつもりがなくても、それを受け取った人が嫌な気分になってしまったら、そんな気分にさせてしまったことについては謝ります。その方が「気に入らなかった」ということを私が認識したことを伝わるようにしています。

未帆 ちゃんと向き合うというか、一旦自分の心に受け入れるタイプですか?

十和子 そうですね、ただ、みんなが見るコメント欄でひどい内容だと「そう見えているかもしれませんが、そうではありません」と、そこはしっかり否定します。相手の言い分やそのこと自体を否定して謝るのではなく、相手の気持ちに寄り添いたいと思っています。

娘の絶対的な味方でいたい
だから悩みや気持ちは、一旦まるごと受け止める!

未帆 娘さんたちにも、傷つくことからの自分の守り方、いじめまでいかなくても友人関係の悩みとかについてアドバイスされますか?私はこれから娘がそうなったときに、どうアドバイスしてあげればいいのかな?って。

十和子 一旦はすべて受けいれることにしています。「そうだね、嫌だったね。そんなこと言われたら悲しいよね」って、子どもの気持ちをまるっと一度受け止める。「でも、あなたが〜だからこうだったんじゃない?」と言われても、子どもはすぐには受け入れられないんですよね。

未帆 親が無条件に受け入れてくれる、絶対的に自分の味方でいてくれると確信を持てることは子どもにとって大きくて、大人になって何かをする時に必ず力になると思う! 私自身もそうでした。そういった土壌づくりみたいなのは子育てで大事だなって思います。

十和子 未帆さんはされてらっしゃると思う。小さいうちからお嬢さんがどう思うか、感じるかっていうところを聞いてあげて、まるごと受け入れてらっしゃる姿勢が伺えるなって。私が未帆さんくらいの年齢の時はもうちょっとピリピリしてて、娘たちが幼稚園、小学校のときは私の顔色を伺うこともありましたよ(笑)

Bag / CHANEL
Sandals / HERMES
Pierced Earrings, Nacklace, Watch / Van Cleef & Arpels

君島十和子さんとのSpecial Talk -PART3-

君島十和子さん プロフィール

Instagram: @ftcbeauty.official
FTCクリエイティブディレクター
高校在学中に「’85m年JAL沖縄キャンペーンガール」に選ばれ、芸能界デビュー。
1986年『JJ』のカバーガールを務め、同誌専属モデルに。その後、舞台やテレビなどを中心に女優として活躍。結婚を機に芸能界を引退。2005年、20数年に及ぶ美容体験をもとに、化粧品ブランド「FTC(フェリーチェトワココスメ)」を立ち上げ、製品開発に携わる。
二人の娘の母。
美容家としてメディア、SNS等で精力的に活動している。

取材・文/北山えいみ

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